不二のあれは地顔だし、優しいって言われるアレは性格だけどさ。
俺は結構周りに気を使ってるって、皆気づいてないんだろうなぁ。
周りが認識してる菊丸英二はホントの俺と違うって………知ってた?




バック トゥ ザ




だから、正直。あんまり元気がないときは色々キッツイんだよね。
自分がこうやって組み立ててきちゃったもんだから仕方ないけどさ。
今年も同じクラスになったからって、不二は別に助けてはくれないし。

ここで溜息なんかついたら、それはそれでうるさいんだろうな。
あーもーほっといてくれればいいのに。つーか、助けろよ不二。



「英二君、ねぇったら」

「今は私と話してるの」

「あのさ、英二君?」



……………適当に接しながらも、不二に念を送ってみる。
絶対伝わってると思うけど(だってそれなりに込めてみたし)無視された。
まぁ、そしたら不二にこの群?が襲い掛かるわけだからしょうがないけど。
だからってさー親友が困ってるんだから助けてくれたっていいじゃん。

もう俺、疲れてるし相手するのも面倒だから話たくないわけですよ。
新しいクラスメイトだから、更に興味持ってくれちゃってるんだろうなぁ。
別に俺はキミたちにこれからも興味無いからどうでもいいんだけど。

いいよなぁ、不二は。彼女が同じクラスだからここまでしつこくされないだろうし。
俺もと同じクラスがよかった。勿論、女避けってだけじゃなくてさ?



「英二君、聞いてる?」

「だーかーらーねぇってば」

「どこ見てるの?英二君」



やっぱり笑いながら適当に対応してるけど、ホントしんどい。
近くの席にいるのに、素知らぬ顔で読書してる不二がうらめしい。
あーもーいっそ不二のとこ行ったら?って言ってしまおうか。
…でもそれはそれで不二の逆鱗に触れたら困るしな…俺が後で。

いつもだったらそこまでじゃないんだけどさ…あーもーやだ。
せめて同じクラスだったら、この図にむっとするの顔とか見れるのに。









―ふと、視線を感じる。
彼女達のどこかキャピキャピしたものではなく、男の羨望っぽいものでもなく。
どちらかといえば、呆れているような、少し怒気を含んだような、その視線。
そろそろと感じるままに視線を向けて、俺の目に入ったのは。

ああ、タイムリーじゃん。ほんとに、ナイスタイミング。
やっぱ俺らってディスティニーだって思っちゃうよ。



「ちょーっと、ごめんね」

「え、ちょっとぉ、英二君?!」



そこにいたのは、俺を見てたのは。大好きでたまらないだった。
移動教室の途中なのか、教科書とかペンケースを持ったまま立ってて。
見覚えの無い女の子達と一緒だったけど、でも、俺を見てた。

後ろの非難の声なんか、もう聞こえないし、そんなのどうでもいい。
後でどうにでもなる。比べるまでもなく断然。こっちのが大事だから。



「…っ、!」









あんなにじっと見てたくせにさ。気づかれてると思ってなかったのか
俺が直ぐに教室から出てきたら、驚いて何度か瞬きをして
そしていつものように俺の名前を呼んでくれた。



「…英二?」

「ん、姿が見えたから。走ってきてみた」



にこっと笑ってそう言ってみると、少しだけ頬を赤くした。
可愛いなぁと思いながら、その体に触れようとするとまた視線を感じた。
俺って無駄に敏感だよなぁ、なんて思いながらそっちを向いた。



「………なに?」

「あ、やっぱりカワイイなぁって思って」

「あはは、ありがとねー」

てば、こんなカワイイのにそんなことないって言うから」



俺としてはカッコイイのが嬉しいから否定してもらってもいいけどね?
どうしようかなぁと思いつつ、まずは逃げられないように腕を取ってみた。
会いたいと思ってたとこにいたのに、みすみす逃せるわけないじゃん。

ちょっと、と慌てたような怒ったような声はいつものように聞こえないフリ。
のクラスメイトにニコーって笑って、借りてくね?って言い残して
無駄な抵抗をするをそのまま適当な場所までずるずると引っ張った。









「ちょ、英二ったら」

「はいはーい、着いたっと」

「次、移動教室なんだけど…」

「まだ予鈴もなってないんだから平気だって。それともサボる?」

「そんなの、ダメに決まってるでしょ」



結局、人があんまり来ない校舎の端まで連れてきた。
どうせ駄目って言われるとわかっていて言った、サボりのお誘い。
受けてくれたら本気でサボるんだけどなー次は確か現国だったし。

…まぁ、は根が真面目だから絶対に受けるわけないけどさ。
思ってた通りにばっさり断られたし。でも俺としてはちょっと淋しい。



「そんな顔してもダメなものはダメ」

「わかってるけどさー」

「…全く、さっきの顔とは大違い」

「へ?」

「廊下から見えたのとか、さっき友達にしてた顔とかと、違うってこと」



はぁ、と溜息をついて、見えた表情は少し呆れてる。
あははと笑って誤魔化そうとしてみる、まぁ、今更だけど。
だってほら、騙される方が悪いって誰かも言ってるじゃん?

ってかさ、彼女とその他大勢の子と違うのは当たり前だろ?
だって、俺はの前じゃそんなの気にしてる暇なんてないし。



「うーん?の前だと素だからなぁ」

「え?」

「カワイイ英二君でいるのも大変ってコト」



そう言ってぎゅっと抱きしめた。
びくって体が反応したのに、いちいち可愛いなぁって思った。
こういうところがすきなんだよって、口元が少し緩んだ。



「…ね、疲れたからさ。充電してよ」

「びっくりした…」

チャーン、疲れたにゃー」

「わざわざカワイ子ぶらなくていいの」



仕方ないなぁって、抱きしめ返してくれるのとか。
いつまで経っても照れ屋なまんまのところとか。
なんだかんだ言って、お願いきいてくれるとことか。

俺にはがいるから、他の女はどうでもいいのかもね。
だからいつまで経っても、こんなことしてるのかもしんない。



「俺がカッコイイのはの前でだけかもね」

「………ばか」



そんなことを言ったら、真っ赤な顔でそっぽ向かれたから
顎を引き寄せると、その甘い唇をそのまま奪ってやった。

黙ってしまったことに満足して、予鈴が鳴るまで抱きしめた。
これで、充電完了かな。なんてことを、思ったりした。









050905/あめのしずく