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いつも英二は甘くて、優しくて、あったかい。 英二は私から話すまで何も聞かなかった。 多分、わかっていたんだと思う。きっとそう。 自分でもわかりやすいくらいに落ち込んでいたから。 そんな表情で唐突に訪れた私を、何も聞かずに部屋に入れてくれた。 そういうさり気ない優しさとか、人の心に誰よりも敏感なところとか そういうところが、本当にすきで私はやっぱり甘えてしまいたくなる。 コーヒーが飲めない私のために、あったかいミルクを入れてくれて。 ちいさなソファに座ってふたりで何も言わずに、ゆっくり飲む。 大人がふたり座ればもういっぱいになるけれど、私はそれが好きだった。 そのぶん、英二の体温が感じられるから。 あったかいミルクは、悲しい気持ちを溶かしてくれた。 悲しい気持ちは涙になって、一粒一粒ポロポロと零れた。 「あのね」 「うん」 「やっぱり、だめだった…」 「うん」 「頑張ったんだけどなぁ…」 「知ってるよ」 「やっぱり悲しい…」 よしよし、ってまるで子供にやるみたいに頭を撫でられる。 でも、そうされるのは嫌じゃなくて。もっと泣いてしまった。 泣いた方がすっきりするから、泣いちゃえ。 そう言われたらもう止まらない。ポロポロポロポロと、零れた。 涙の雫は水溜りになったけれど、代わりに悲しい気持ちは楽になった。 「…なんか、ごめんね」 「ん?なんで」 「私、英二に甘えてばっかり」 「なーに言ってんの」 仕方ないなぁって顔をしてから、英二が笑った。 私のことを抱きしめて、囁くように言ってくれたその言葉。 「そんなの、お前限定だから気にしなくていいの」 うれしくて、本当にどうしようかと思った。 こんなにも英二は優しくて、温かくて、すきだと思った。 温かい体温に溶けてしまった気持ち。 変なところで意地っ張りな私が甘えられるのは英二だけ。 弱くて情けない私を見せられるのは、英二だけなんだよ。 私の弱気な言葉を聞いて、頭を撫でて、抱きしめて。 それを当然のようにしてくれるあなたがすき。 「えいじ、すき」 「…俺もね」 ごく自然に唇を重ねる。 軽い口付けは直ぐに離れ、英二は私を抱きしめた。 安心させるように強くぎゅって抱きしめてくれた。 だから、私も大丈夫だよって抱きしめ返した。 英二がいてよかった。英二をすきでいてよかった。 「よかった、顔色良くなってる」 「…ん」 「あとは今日なんか好きなもん作ってやるよ」 「コロッケがいい…」 「ええ?!作るのめんど…」 「私も手伝うからー英二のコロッケ食べたいー」 「あーあーはいはい、わかったわかった…」 近くのスーパーまでふたりでお散歩。 手を繋いで、話をしながらゆっくりゆっくり歩く。 明日からまた頑張ろう。 だから、今日はめいっぱい英二に甘えよう。 繋いだ手の体温を感じながらそう決めた。 そう思える私はきっと幸せなんだろうって、思った。 咲き始めた花の甘い香りが私達の鼻をくすぐる。 ああ、もうすぐ春になるねってふたりで笑いあった。 image by Rain Drop 07/03/12/ |