心臓が止まるかと思った。
今度こそ、死んでしまうんじゃないかって思った。

でも、違った。ちゃんと生きて帰ってきてくれた。
うれしかった。ずっと堪えていた涙が思わず零れる。



「―あ、



私は怖かった。
帰ってきてくれなかったら、どうしようって思った。

泣きそうになって、ぼやけたモニターを見つめてた。
自分に絶対大丈夫だ、って言い聞かせて。
何も出来ない自分がもどかしくて、悔しくて、悲しかった。

なのに、どうして。
貴方は何事もなかったように、笑ってるの?
そんなに酷い怪我をしてるのに、死にそうになったのに。

私たちを心配させないため?
ううん、それは違う。

こんなのは、大したことないからだ。
だって、貴方が求めているのは怪我のもっと先。
気づいてしまった。わかってしまった。

貴方は自分のことなんかどうでもいいんだ。
死んでもいい、って。そう思ってるんだ。
だから、怪我したってヘラヘラ笑っていられるんだ。

私はこんなに心配したのに。
そんなものは、貴方にとっては邪魔なんだ。



「…?わ、ど、どうして泣いて…」

「ないて、ません…っ」



自分の感情が、全て否定されたような気がした。

ううん、そんなことは問題じゃない。

わたしは…
わたしは、貴方に生きていて欲しいのに。
自分のことをそんな風に思わないでください。



「………枢木准尉…上官に対するご無礼、お許し下さい」

「え?」



嫌われてもよかった。
でも、そうせずにはいられなかった。



パァン、と乾いた音が響く。
私が頬を叩いたのだ。真っ直ぐに貴方を見据えて。
何が起きたのかわからなかったのだろう、ただ、驚いて。

口を開く前に私は踵を返して、その場から逃げ出した。



どう思われてもよかった。
だけど、直接貴方から聞きたくなかった。
矛盾してるけど、わかってるけど、どうしても出来なかった。









部屋に戻って、声を押し殺して泣いた。
呼び出しのベルがしつこいほど鳴ったけれど、聞こえないフリをした。
仕事中だとか、そんなことはぜんぶ、今はどうでもよかった。

私は何故泣いているのか、悲しいのか悔しいのか切ないのか。
色んな感情がぐちゃぐちゃで、全てその理由のひとつで。
痛くなるほど頭がいっぱいで、思考がまとまらなかった。

ただひとつだけ、わかることは。
どうしようもないほどに、ただ、ココロが痛いということだけ、だった。

でもその痛みさえも、貴方は知らない。









image by 水珠




07/02/04/